精神障害と社会:誤解を解くための啓発活動

最終更新日 2024年5月8日 by hiawas

こんにちは、障害者支援団体の代表の鈴木です。私たちの団体は、障害を持つ方々の社会参加と平等を推進するために日々活動しています。その中でも、精神障害に対する社会の誤解や偏見は根強く、大きな課題となっています。

今回は、精神障害に関する代表的な誤解を取り上げ、それがもたらす悪影響について考えてみたいと思います。そして、誤解を解くための啓発活動の重要性と、私たちの取り組みについてもお伝えしたいと思います。

精神障害は、決して特別なものではありません。WHO(世界保健機関)によると、世界の約4人に1人が生涯のうちに何らかの精神疾患を経験するとされています。身近な問題であるにも関わらず、正しく理解されていないのが現状なのです。

一緒に、精神障害に対する誤解を解き、理解を深めていきましょう。そして、誰もが安心して暮らせる社会を目指して、一歩一歩前進していきましょう。

精神障害に関する誤解

精神障害には、様々な誤解や偏見が存在します。ここでは、代表的な3つの誤解を取り上げます。

危険というイメージ

精神障害者は危険で暴力的だというイメージがあります。しかし、これは大きな誤解です。実際には、精神障害者が事件を起こす確率は一般の人と変わりません。むしろ、精神障害者の方が被害に遭うリスクが高いという調査結果もあります。

2016年に内閣府が行った調査では、「精神障害者は危険」という偏見を持つ人の割合は、約30%にのぼりました。マスメディアが事件を過剰に取り上げることで、このようなイメージが助長されているのかもしれません。

治らない病気との偏見

「精神障害は治らない」という偏見も根強くあります。確かに、完治が難しい疾患もありますが、あん福祉会などで適切な治療とサポートを受ければ、多くの場合は症状をコントロールできます。

私たちの団体がサポートした Aさんは、統合失調症と診断されました。服薬と生活リズムの改善に取り組んだ結果、症状は安定し、現在は就職して元気に働いています。回復した当事者の体験談を広めることで、治らないという偏見を解いていくことが大切ですね。

甘えや怠惰との誤解

精神障害を「甘え」や「怠け」と捉える誤解もあります。しかし、うつ病や不安障害など、多くの精神疾患は本人の意思とは関係なく発症します。「がんばれば治る」というものではないのです。

2019年に実施された「精神疾患の経験や治療に関する世論調査」では、うつ病を「性格の問題」と捉える人が約25%いました。このような誤解が、当事者の治療に対する躊躇や、周囲からの理不尽な評価につながっているのです。

誤解がもたらす影響

前述したような精神障害への誤解は、様々な悪影響をもたらします。

社会的スティグマ

精神障害への偏見は、社会的なスティグマ(烙印)となり、当事者の生活に大きな影を落とします。就職や結婚、住宅の確保など、様々な場面で差別や排除につながるのです。

Bさんは、うつ病の診断を受けたことを職場に伝えたところ、配置転換を命じられました。能力ではなく、病名だけで判断された悔しい経験だったと話していました。

差別や偏見の助長

誤解に基づく言動は、差別や偏見を助長します。「キチガイ」「気違い」など、精神障害者を侮蔑するような言葉が未だに使われているのは問題です。

また、精神障害をネタにした不適切な表現がメディアで散見されることも、偏見を助長する要因と言えるでしょう。

孤立と社会参加の阻害

周囲の無理解は、当事者を孤立させ、社会参加を阻害します。「迷惑をかけたくない」「理解されない」と感じた当事者は、自ら援助を求めることをためらってしまいます。

Cさんは、パニック障害のために外出が困難になりました。周囲に相談できず、一人で悩む日々が続いたそうです。家族の理解と支援によって、少しずつ社会とのつながりを取り戻したと言います。

誤解がもたらす影響は深刻です。一人ひとりが精神障害への理解を深め、当事者に寄り添う姿勢を持つことが何より大切だと感じています。

啓発活動の重要性と実践

精神障害への誤解を解くためには、啓発活動が欠かせません。正しい知識を広め、当事者の声に耳を傾ける取り組みを続けていくことが重要です。

正しい知識の普及

まずは、精神障害に関する正しい知識を普及することが大切です。私たちの団体では、精神疾患の基礎知識や接し方について、分かりやすいパンフレットを作成しています。地域の図書館や公民館などに配布し、多くの方に手に取ってもらえるよう工夫しています。

また、学校教育の中で精神疾患について学ぶ機会を設けることも有効だと考えています。児童・生徒の時期から正しい理解を促すことで、将来的な差別や偏見の解消につながるはずです。

当事者の声を届ける

啓発活動では、当事者の声を届けることが何より重要です。私たちの団体では、当事者による体験談の発信に力を入れています。

例えば、「こころの健康フェスティバル」という年1回のイベントでは、当事者が自身の経験を語るプログラムを設けています。病気と向き合う中で感じた苦しみや、回復への道のりを赤裸々に語ってもらうことで、聴衆の心に強く訴えかけます。

また、当事者の手記をまとめた冊子を発行したり、ウェブサイトで体験談を掲載したりするなど、様々な形で当事者の声を発信しています。

メディアとの連携

マスメディアは、精神障害のイメージ形成に大きな影響力を持っています。私たちは、メディア関係者との勉強会を定期的に開催し、適切な報道のあり方について議論しています。

過剰な犯罪報道や、不適切な言葉遣いについて指摘し、改善を求めています。一方で、回復した当事者の姿を積極的に取り上げてもらうなど、建設的な報道の実現に向けて協力を呼びかけています。

地道な努力ではありますが、メディアとの連携によって、社会全体の意識を変えていくことができると信じています。

啓発活動は、一朝一夕には結果が出ません。しかし、一人ひとりの理解者を増やしていくことが、社会を変える大きな原動力になるはずです。私たちは、これからも粘り強く活動を続けていきます。

まとめ

精神障害に対する誤解や偏見は、当事者の生活や社会参加を大きく阻害します。危険なイメージ、治らない病気、甘えや怠惰など、根強い誤解が存在しているのが現状です。

こうした誤解がもたらす影響は深刻で、社会的スティグマ、差別や偏見の助長、孤立と社会参加の阻害など、様々な形で当事者を苦しめています。

誤解を解くためには、啓発活動が何より重要です。正しい知識の普及、当事者の声を届ける取り組み、メディアとの連携など、多角的なアプローチが求められます。

私たちの団体では、パンフレットの配布、体験談の発信、メディア関係者との勉強会など、地道な活動を続けています。一人ひとりの理解者を増やすことが、社会を変える大きな力になると信じているからです。

精神障害は、誰にでも起こり得る身近な問題です。当事者に寄り添い、支え合える社会を目指して、これからも活動を続けていきます。

読んでくださった皆さんも、ぜひ精神障害への理解を深めていただければと思います。そして、偏見や差別のない社会の実現に向けて、一緒に歩んでいただけたら幸いです。